大漁未来主義 展キュレーターBYイトウモ | 2018年4月1日〜15日開催台場公園、猿江恩賜公園、隅田公園、上野恩賜公園、皇居 | I was reborn内山智恵 | 日本誕生じょいとも |
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本歌取りゲームじょいとも | Re:横山奈穂子 | ゴースト・フィッシング・クラブトモトシ |
グロイスフィッシングクラブ第3回展覧会を4月1日より6日間行いました。このサイトは、web版の記録展です。
展覧会名 :大漁未来主義
開催日:4月1日(日)、4月4日(水)、4月7日(土)、4月8日(日)、4月14日(土)、4月15日(日)
時間:13時〜18時
場所:順に台場公園、猿江恩賜公園、隅田公園、上野恩賜公園、皇居
企画・主催:グロイスフィッシングクラブ
キュレーター:イトウモ
参加作家:内山智恵、じょいとも、トモトシ、横山奈穂子
Aから順にルートを辿って開催しました。
A:台場公園4/1
B:猿江恩賜公園4/4
C:隅田公園4/7
D:上野恩賜公園4/8
E:皇居4/14,15
地図のマップポイントをクリックすると展覧会の記録写真が閲覧できます。※読み込みに少し時間がかかります。
大漁未来主義とは何だったのか
キュレーター イトウモ
今回、3回目のグロイス・フィッシング・クラブの展示では、ボリス・グロイスの中心思想「ロシア宇宙主義」から着想を得た。
「ロシア宇宙主義」について国民の「時間」に関わる平等を実現するために、今までに亡くなったあらゆる人を蘇らせる国家事業として構想され、美術領域において未来永劫、作家の人間性を美術館に保存するためのコンセプトとして美術領域に住処を得た思想という点を切り取った。
今回の展示では「国家事業による死者の蘇生」、そして同コレクティブが掲げる「釣り」というコンセプトに焦点を当てた。そこで、死者を集めながら東京湾から皇居を目指し、開催時期にちなみ花見を繰り返すこパフォーマンスを実行した。
花見のモチーフには、坂口安吾の「桜の森の満開の下で」にある、屍体が埋まっている不吉な場所としての満開の桜の樹の言い伝えに端を発しており、ペリー来航に備えた砲台がある台場公園、東京大空襲の被害者が埋葬された猿江恩賜公園、上野公園、同空襲の慰霊堂を擁する隅田公園、そして皇居の5箇所で2018年4月1日から15日にかけて6回開催した。
展示は4人の作家によって構成される。 じょいともは『日本誕生』で、海をイメージした青地に白で旭日旗をモチーフにしたブルーシートを会場に広げ、奈良、平安時代の神官に扮したじょいとも自身がホストを務め、自作のカルタによって来場者と即席のカードゲームを催す。木製のそれぞれの牌には、百人一首の和歌の1節ずつが書かれており、参加者はそおから和歌のルール通りに5音のものを2つ、7音のものを3つ、表記を隠したまま選択、2回以内の交換で望みの5枚の組み合わせを決めて、サンプリングによって新しい和歌を作る。参加者はそれぞれにこのキメラ状態の自作の和歌についての解釈を述べ、当意即妙さを競う。じょいともの意図には、和歌の出来不出来が古代の日本において政局を左右する重要な要素であったことへの参照があり、優れた和歌によって死者をおびき寄せるしかけになっている。
内山智恵は、昭和天皇の石膏像『I was reborn』を製作。胴体の部分が埋まっており、海を模したブルーシートから四肢と顔だけが顔を出す。大人と同じ等身だが、柔らかく握られた手や仰向けのままでの非力そうな身振りには、赤ん坊のイメージが付与されている。作家によると、そこには敗戦国が再び、「ロールプレイングゲームのセーブポイントからやり直すようなイメージ」が重ね合わされており、例えば「生まれる」という言葉がそうであるように、敗戦と死、そしてそこからの(再)生という変化がどうしても受動的に引き起こされることを表した。
トモトシの作品はパフォーマンス『ゴースト・フィッシング・クラブ』。日の丸に描かれた太陽をイメージした赤いパーカーをかぶって通行人に扮し、浅草の雷門前や渋谷のハチ公前など東京の観光地で撮られた観光客のソーシャルメディア「Instagram」の写真に写り込む。彼が会場で掲げるQRコードからリンクに飛ぶと、トモトシが写り込んだ写真を集めた(釣り上げた)タイムラインに飛ぶことができる。作家はそこに写り込んだ自分を複数の平行世界を旅する「幽霊」のようだと自称する。内山が制作した「天皇」の石膏像が、亡くなった日本国民を呼び集めるためのルアーだったとすれば、トモトシは生きている観光客を集めるルアーなのだ。写真の中の、今はもう生きているかどうかもわからない人たちに紛れた「幽霊」としてのトモトシは、この「死者の蘇生」へ連なる展示会のシャーマンの役割を果たす。 では、私たちはそうして集めた死者たち、観光客をどうするのだろう。
このお台場から皇居を目指す展示の中で、横山奈穂子は会場で絵画『Re:』(縦91.0×横130.4cm)を制作していく。『Re:』には、コラージュ写真やGoogleマップの航空写真、場所を示す表記やアイコンなどでできており、展示中に油彩絵の具によって塗り替えられていく。加藤典洋による映画『ゴジラ』(1959)に関する批評で、ゴジラが太平洋戦争の死者の怨霊であること、そしてそれが皇居を目指し、その前で旋回して海に帰ることが指摘されているが、横山の作品はそうした死者たちが集まり、国家を見舞うだけでなく、その死者たちを集める祭りが私たち自身の生者の未来を描き変える可能性を描いている。横山は自身のアーティストステイトメントに新古今和歌集から持統天皇の和歌「春過ぎて 夏来にけらし白妙の 衣干したる 天香山」の和歌を参照している。展示は4月15日まで続く。東京大空襲は1945の5月まで続いた。この和歌は梅雨明けの夏の訪れを寿ぐ。爽やかな日差しの中にはためく真っ白の爽やかな「衣」がここでは、風に揺れる人影という不気味とも神秘的とも言えるイメージを呼び起こす。それは私たちの展示が待ち望む「未来」として再来する「幽霊」の姿だ。
画像をクリックするとstatementが読めます。
『日本誕生』
『本歌取りゲーム』
じょいとも
『I was reborn』
内山 智恵
Instagramアカウントphotobomber_tomotosi
『ゴースト・フィッシング・クラブ』
トモトシ
『Re:』
横山 奈穂子
最終日に振り返りトークを収録しました↓
次回展覧会のキュレーターを募集中!
次回展示(2018年8~9月予定)のキュレーターの募集を開始しました。応募締め切りは5月31日です。奮ってご応募ください。
応募方法はホームページの応募フォームに投稿いただくか、
https://groysthe2nd.wixsite.com/offer
GFCのメールアドレスに件名を【キュレーション案】としてメールをお送りください。
groys.the2nd@gmail.com
今回よりステートメントの他にイメージ図なども審査対象とさせていただきますので、ビジュアルイメージがある方はそちらも併せてご提出ください。